日本薬理学雑誌
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創薬シリーズ(6)臨床開発と育薬(14)(15)(16)
製造販売業三役体制と製薬企業の危機管理について
神崎 充
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キーワード: 製造販売業, 三役, 危機管理
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2012 年 140 巻 1 号 p. 32-35

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抄録

医薬品はリスクとベネフィットのバランスの上に成り立っており,品質が確保され,有効性と安全性のバランスを確認した情報が付加されて,はじめて医療に役立てられる.製薬企業は,品質や安全管理情報を収集,検討し,その結果に基づき,絶えず品質改善や安全確保のために必要な措置を講じる必要がある.これらの業務を担う責任者として,企業に設置が義務づけられているのが総括製造販売責任者,品質保証責任者および安全管理責任者のいわゆる製造販売業三役である.わが国の薬事法は,過去の薬害を教訓として様々な制度が導入されてきたが,製造販売業三役の制度もその一つで,製品の市場への責任の明確化と製造販売後の安全対策を充実,強化するとともに,欧米との国際整合性を図ることを目的に導入された.医薬品の安全確保をより強化するためには,社内の組織や関係者の権限と責任の明確化,関係部署間の相互連携と牽制機能の円滑化,適正な情報の評価に基づく迅速な意思決定の仕組みを構築しておく必要がある.とりわけ総括製造販売責任者をはじめとする製造販売業三役は,その中心的な存在として,日頃から社内外のネットワークを整備し,製品の品質管理および安全管理の適正な運用に努めるとともに,有事の際は危機管理リーダーとしての職務遂行が求められる.このような対応を的確に行う上で,情報を製造販売業三役に一元的に集約・アーカイブすることが,国内外の様々なステークホルダーに対し,これまで以上に透明性のある説明責任を果たす上でも重要と考える.

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© 2012 公益社団法人 日本薬理学会
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