日本薬理学雑誌
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特集 統合失調症治療薬の研究開発
統合失調症動物モデル—新しい認知障害モデルについての提言—
池田 和仁
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2012 年 140 巻 3 号 p. 102-106

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抄録
疾患動物モデルは,(1)想定する仮説に基づき,(2)ある動物種を用いて,(3)何らかの方法で病態を引き起こし,(4)ある測定手段を持って評価を行うことになる.統合失調症動物モデルに関してこれら4要素に分け整理すると,まず仮説については臨床から偶発的に見つかった事象(back-translational psychopharmacology research)から提唱された仮説から,疫学調査・病理学さらに遺伝学(translational psychopharmacology research)から構築された仮説へと広がりを見せ始めている.動物種については,前頭葉皮質の未発達なげっ歯類に代わり,ヒトとのギャップを少しでも埋めるべく霊長類に注目が集まりつつある.統合失調症様症状を引き起こす方法については,出生前に遺伝子を改変,あるいは免疫学的な環境負荷をかける方法,出生後の幼若期に免疫学的あるいは精神的ストレスによる環境負荷,あるいはイムノトキシンなどで特定の神経細胞を破壊する神経回路制御法,さらにNMDA拮抗薬投与などによる従来の薬理学的手法も多く報告されている.評価方法に関しては,特に認知機能評価は霊長類(NHP: non-human primate)を対象としたCANTAB(Cambridge Neuropsychological Test Automated Battery)装置の利用によって,臨床においてMCCB(MATRICS Consensus Cognitive Battery)やCogStateによって整備・細分化された各認知ドメインへの対応づけが可能となる.さらにfMRI(functional Magnetic Resonance Imaging)やERP(Event-Related Potential)などの中間表現型の評価系を併せて活用していくことも試み始めている.
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© 2012 公益社団法人 日本薬理学会
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