日本薬理学雑誌
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特集 統合失調症治療薬の研究開発
統合失調症治療薬開発におけるニューロイメージングバイオマーカーの役割
尾崎 諭司
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2012 年 140 巻 3 号 p. 107-110

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抄録

統合失調症は陽性症状,陰性症状,認知機能障害を主たる症状とする精神疾患であり,若年で発症し,その罹患率は約1%といわれている.統合失調症の治療薬には,ハロペリドールやクロザピンに代表される,第一・第二世代抗精神病薬が用いられているが,錐体外路症状のような副作用が生じやすい点や,陰性症状や認知機能障害に対する有効性が乏しいことから,新たな治療薬の開発も期待されている.しかしながら,統合失調症をはじめとする抗精神病薬の開発においては,精神作用に対するその薬物の効果の客観的な評価や,標的組織である脳への薬物の移行性,標的分子の周辺環境中での薬物濃度の確認等が臨床では困難であるため,それらがこの領域における新薬開発の難易度を上げる要因にもなっている.近年,バイオマーカーやトランスレーショナル研究の創薬プロセスへの利用が活発になってきているが,fMRI(functional magnetic resonance imaging,機能的核磁気共鳴画像法)やPET(positron emission tomography,ポジトロン断層法)などの画像解析法は,脳神経活動の変化や,薬物の脳内動態および標的分子への結合量(占有率)を実験動物からヒトまでを同一手法を用いて非侵襲的に測定できるため,中枢作動薬の開発においても徐々に活用されるようになってきている.特に統合失調症の領域においては,[11C]racloprideを用いたPET受容体占有率試験によるハロペリドールの薬効と受容体占有率の関係を示す研究に代表されるような,PETを用いた多くの研究がなされており,治療薬の開発においても,PET占有率試験に代表されるイメージングバイオマーカーの活用が増えてきている.本節では,統合失調症治療薬の開発においてバイオイメージング技術がどのように活用されているかについて,PETの例を中心に紹介したい.

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