日本薬理学雑誌
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特集 薬理学領域における磁気共鳴画像法の可能性
MRI用ガドリニウム造影剤を用いた脳関門の時空間的解析
伊藤 康一
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2012 年 140 巻 4 号 p. 151-155

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抄録

磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging: MRI)の一番の利点は,非侵襲的に一個体の脳内変化を経時的に観察でき,動物の状態や行動を対応させて評価検討できることである.また,従来の研究手法に用いられる動物数に比べ減少させることが可能である点も動物愛護の面から評価される.MRIは様々な撮像法により,脳の病態を捕らえることが可能になってきた.本稿では脳神経疾患(てんかん,脳内出血,髄膜炎)における脳関門(brain barrier: BB)の病態変化についてin vivoモデル動物のMRI評価方法を紹介する.BBは,一般的に脳の恒常性維持また外界からの攻撃から守る重要な機能を有し,血液脳関門(blood-brain barrier: BBB),血液脳脊髄液関門(blood-cerebrospinal fluid barrier: BCSFB),血液クモ膜関門(blood-arachnoid barrier: BAB)などに分類されている.最近,脳神経疾患においてBB機能不全が疾患の病態生理変化に深く関わっていることが注目されている.本稿では,てんかん,脳内出血,髄膜炎モデル動物を用いて,BBの状態を研究する上でのMRIの有用性を示した.てんかん発作とBBB透過性亢進や破綻の時空間的検討が可能となる.脳内出血における出血,血腫また脳浮腫さらに運動機能障害などを合わせて経時的に検討するためにはMRIは大変有効な手法である.また,炎症疾患である髄膜炎は,クモ膜下腔という微細部位を高磁場MRIで観察することができる.このように,基礎研究においてMRIと疾患モデル動物を用いた研究は,形態学的研究のみならず病態生理学的研究,各種造影剤を用いた分子イメージング,また薬理学的解析など応用範囲は広い.今後多くの研究者がMRIを利用して脳のin vivo研究を発展させていただきたい.

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