日本薬理学雑誌
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総説
トキシコゲノミクスとバイオマーカー
山田 弘
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2012 年 140 巻 5 号 p. 221-225

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抄録
“トキシコゲノミクス”は,当初,主に遺伝子発現プロファイル技術を応用した毒性学研究を意味していたが,最近ではゲノム全体の構造や機能等にも着目し,それらの解析を実現するゲノム技術も応用した毒性学研究として,以前より幅広く捉えられるようになってきている.この場合,従来の遺伝子発現プロファイルに基づく毒性学研究は,トキシコトランスクリプトミクスと呼ばれることになる.厚生労働行政における国民医療において,医薬品の副作用回避は重要な課題の一つとなっている.一方で,依然として臨床試験中あるいは上市後に予期せぬ副作用が発生し,開発を断念あるいは市場から撤退する医薬品が後を絶たない.肝障害を例とした場合,糖尿病治療薬トリグリタゾンやワルファリンに代わる抗凝固薬として期待されたキシメラガトンの販売中止が記憶に新しい.医薬品の重篤な副作用発現は国民の保健と福祉を脅かすとともに,製薬企業の経営に悪影響を与える要因ともなりうる.従って,医薬品のヒトでの安全性を予測および診断する新しい測定法,技術およびバイオマーカー等の開発が急務となっており,それによりトキシコゲノミクス研究の発展に対する期待も大きくなっている.本稿では,産官連携プロジェクトとして進められた第1期および第2期トキシコゲノミクスプロジェクトの研究成果をトキシコゲノミクス研究の進展を示す事例として紹介するとともに,当該研究領域の将来について考察する.
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© 2012 公益社団法人 日本薬理学会
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