日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
骨髄異形成症候群(MDS)治療薬アザシチジン(ビダーザ®注射用100 mg)の薬理作用と臨床試験成績
高橋 ゆかり木村 幸恵岡野 昌彦
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2012 年 140 巻 5 号 p. 235-243

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抄録

ビダーザ®注射用100 mg(有効成分:アザシチジン)は,「骨髄異形成症候群」の効能・効果,「75 mg/m2(体表面積)を1日1回7日間皮下投与または10分かけて点滴静注し,3週間休薬する.これを1サイクルとし,投与を繰り返す.なお,患者の状態により適宜減量する.」を用法・用量として2011年1月に承認された.アザシチジンは,シチジンと同じ核酸輸送系で速やかに細胞内に取り込まれた後,RNAおよびDNAに組み込まれ,殺細胞作用ならびにDNAメチル化阻害作用により骨髄の異常造血細胞に対して抗腫瘍効果を発揮すると考えられている.一方,臨床においては,骨髄異形成症候群(MDS)患者に対する海外臨床試験として,薬物動態試験(AZA-002試験),第II相試験(CALGB8421試験,CALGB8921試験),第III相試験(CALGB9221試験,AZA-001試験)が実施されている.特に高リスクのMDS患者を対象としたAZA-001試験において,アザシチジン投与群の生存期間(中央値)は24.5ヵ月であり,通常治療群の15.0ヵ月と比較して有意に延長させた.また,アザシチジン投与群の2年生存率(50.8%)は通常治療群(26.2%)の約2倍であった.国内で実施した臨床第I/II相試験において,日本人被験者のAUC0-∞から算出した皮下投与時のバイオアベイラビリティは91.1%であり,海外データと同様の結果が得られた.有効性においては,血液学的改善は54.9%,血液学的寛解は28.3%に認められた.また,ベースライン時に赤血球輸血依存であった被験者のうち,治験期間中に輸血非依存となった被験者の割合は全体で55.6%,低リスク患者では66.7%であった.投与経路別の比較では,皮下投与と点滴静注で同等の成績が得られ,アザシチジンの有効性に投与経路による差異はなかった.安全性について,好中球減少症や血小板減少症などの血液障害に関する有害事象が最も多く,そのほかに便秘,下痢などの胃腸障害,注射部位紅斑,倦怠感などが認められた.いずれも予想される事象であり,対症療法やアザシチジンの休薬,減量,中止等により管理可能であった.以上の事から,ビダーザ®注射用100 mgは,MDSの高リスク患者においては生存期間の延長,低リスク患者においては輸血依存からの脱却を目的として,治療上の新たな選択肢の一つになることが期待される.

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© 2012 公益社団法人 日本薬理学会
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