抄録
2013年4月に,リスク管理制度が本邦でも導入される.医薬品のリスクを明らかにし,これらに対応してどのように試験・調査等を実施して安全性を監視するのか,どのようなリスク最小化策が必要なのかを医薬品リスク管理計画書案としてまとめ,承認審査の過程で当局と企業で協議するという制度である.当局への報告時期をあらかじめ設定し,市販後も引き続き満足できるかどうかのベネフィット・リスクバランスを評価する.販売開始前から医薬品安全性監視活動並びにリスク最小化活動の準備が可能となるだけでなく,評価結果を反映した安全対策の速やかな実施も可能となる.さらに市販後のリスクマネジメントが一つの文書に整理されるため,医療従事者,企業,規制当局のみならず,患者さん等との情報共有が可能となる.日本薬学会では医薬品をより使いやすく有効性及び安全性の高いものに育てるために,患者背景,使用方法,効果及び副作用等を調査・評価し,有効で安全な使い方に関する情報を増やしていく様々な取り組み(制度,活動)を育薬と定義している.リスクマネジメントとはまさに育薬である.有効性だけでなくベネフィット・リスクバランスに視点を置いた情報を,医療従事者だけでなく患者さんへ提供していくことの重要性は増していくと思われる.