2012 年 140 巻 6 号 p. 280-284
脳内に多数存在する神経細胞同士の複雑なネットワークによって,行動発現が制御されている.これまで脳内の特定の神経活動のみを高い時間精度で人為的に制御する手法が存在していなかったため,神経回路機能と行動発現を繋げる研究を行うことが難しかった.光を受容し,細胞機能に影響を与える分子を特定の神経細胞に発現させ,低侵襲的で透過性の高い光を照射することによって,特定の神経活動を操作できる手法(オプトジェネティクス(光遺伝学))が近年開発された.本手法の導入には,分子生物学,生理学,電気生理学,遺伝子工学,光工学などの様々な知識と技術が必要であったが,最近では多くの企業から光遺伝学に特化した便利な装置や物品が販売されており,導入が容易になってきている.本稿では光遺伝学を用い,インビボにおいて特定の神経活動を操作する方法について概説する.