日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
クリゾチニブ(ザーコリ®カプセル200 mg/250 mg)の薬理学的特徴および臨床試験成績
野中 聖子山口 志津代長澤 崇田原 誠
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2013 年 141 巻 2 号 p. 106-113

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抄録

クリゾチニブは,受容体チロシンキナーゼ(RTK)である未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)およびその発がん性変異体(ALK融合タンパク質および特定のALK変異体)に対する低分子阻害薬である.またクリゾチニブは,肝細胞増殖因子受容体(c-Met/HGFR),recepteur d’origine nantais(RON)およびROSのRTKにおけるシグナル伝達も阻害する.酵素レベルの検討では,クリゾチニブはALK,c-Met/HGFR,RONおよびROSのキナーゼ活性を濃度依存的に阻害し,細胞レベルの検討においても,リン酸化反応およびキナーゼ活性を抑制した.また,クリゾチニブはALKに対して強力な増殖阻害活性を有し,ALK融合タンパク質[微小管会合タンパク質(EML4)-ALKおよびヌクレオフォスミン(NPM)-ALKを含む]を発現する腫瘍細胞株においてアポトーシスを誘導した.さらに,クリゾチニブはALK融合タンパク質を発現した腫瘍を異種移植したモデルマウスにおいて,顕著な腫瘍縮小などの抗腫瘍活性を示した.クリゾチニブの抗腫瘍活性は用量依存的であり,in vivoでの腫瘍におけるALK融合タンパク質のリン酸化抑制と相関がみられている.ALK融合遺伝子陽性腫瘍異種移植モデルにおける検討結果およびPK/PD解析から,クリゾチニブの非結合型薬物の有効血漿中濃度は19~23 nM(9~10 ng/mL)と推定され,この結果は臨床試験における目標血漿中濃度の設定に用いられた.臨床試験2試験において,ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象としてクリゾチニブ250 mg 1日2回(BID)の反復投与での有効性および安全性が検討されている.日本人患者を含む国際共同第I相試験(PROFILE 1001試験)において有効性評価が可能であったALK融合遺伝子陽性のNSCLC患者116例(日本人患者15例を含む)での奏効率(ORR)は61.2%[95%信頼区間(CI):51.7~70.1%],日本人患者でのORRは93.3%であり,日本人患者における治療成績は,外国人患者における成績と同様に優れた有効性を示した.また,日本人患者へのクリゾチニブ250 mg BID反復投与は,臨床試験2試験で得られた安全性の結果から,忍容性は良好であり,安全性上問題はないと考えられた.これらの非臨床および臨床試験成績よりクリゾチニブの有用性が明らかとなり,本邦ではALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発のNSCLCの治療薬として2012年3月に承認された.

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© 2013 公益社団法人 日本薬理学会
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