日本薬理学雑誌
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特集 がん化学療法に伴う神経障害性疼痛―最近の研究動向
『抗がん薬による「しびれ」の正体とは!?』 オキサリプラチンに特徴的な急性末梢神経障害におけるTRPA1の役割
中川 貴之趙 萌白川 久志金子 周司
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2013 年 141 巻 2 号 p. 76-80

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抄録

がん化学療法で用いられる抗がん薬のうち,タキサン系,ビンカアルカロイド系抗がん薬や白金製剤などは,副作用として高率に末梢神経障害を誘発するが,現在のところ,有効な予防法や対応法は確立されておらず,がん化学療法の用量規定因子ともなっている.特に,白金製剤オキサリプラチンは他の抗がん薬と異なり,投与直後から数日以内に投与された患者ほぼ全例において,寒冷被曝で誘発,増強される四肢・口周囲のしびれ,感覚異常,また,まれに咽頭・喉頭の締め付け感,感覚異常による呼吸困難や嚥下困難など,特徴的な急性末梢神経障害を誘発することが知られており,臨床現場ではその対応に苦渋している.著者らは,オキサリプラチンによる急性末梢神経障害が寒冷被曝と関連するという特徴に着目し,温度感受性transient receptor potential(TRP)チャネル(TRPA1,TRPM8,TRPV1)との関連について検討を行ってきた.これまでに,オキサリプラチン,あるいはその代謝産物で急性末梢神経障害との関連が指摘されているオキサレートをマウスに投与した数時間以内に,他の抗がん薬では認められない特徴的な冷刺激に対する過敏応答が惹起されるが,このような急性期では触刺激に対する応答に変化は認められないこと,また,この冷過敏応答はTRPA1阻害薬やTRPA1遺伝子欠損マウスで消失することを明らかにした.また,このとき,TRPA1刺激薬の後肢足底内注射による疼痛様行動,単離後根神経節細胞でのTRPA1感受性は増強するが,TRPM8およびTRPV1を介した応答に変化は認められなかった.これらの結果から,著者らは,オキサリプラチンによる急性末梢神経障害時の冷過敏応答は,知覚神経のTRPA1が活性化/機能増強された結果,生じるものであると考えている.また,これらの知見は,しびれや感覚異常といった感覚にTRPA1が関与することを示すものであると考えている.

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