日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
新薬紹介総説
ニーマン・ピック病C型治療薬ミグルスタット(ブレーザベス®カプセル100 mg)の薬理学的特性および臨床効果
北谷 照雄高橋 修哉池谷 理
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 141 巻 3 号 p. 160-167

詳細
抄録
ブレーザベス®カプセル100 mg(一般名:ミグルスタット)は,植物および微生物から抽出されたポリヒドロキシル化アルカロイド(イミノ糖)に属する化合物で,スフィンゴ糖脂質(GSL)の生合成経路の最初の過程に関わる,グルコシルセラミド合成酵素活性阻害作用を有している.このことから,当初,いくつかのスフィンゴ糖脂質蓄積症(ゴーシェ病,ファブリー病,GM2ガングリオシドーシス,GM1ガングリオシドーシス)といった,いわゆるリソソーム病への臨床応用が考えられた.本剤は,まず酵素補充療法の無効例,あるいは,この治療法を継続することができない成人ゴーシェ病I型の治療薬として,2002年11月にEU,2003年7月に米国で承認された.その間,ニーマン・ピック病C型モデル動物にミグルスタットを反復経口投与したところ,神経症状(企図振戦および運動失調等)の発現の遅延,生存期間の延長,小脳の細胞構造の維持および脳におけるガングリオシド蓄積の抑制が認められた.この事実に基づき,成人および小児のニーマン・ピック病C型患者を対象とした臨床試験を実施したところ,進行性神経症状に対する治療効果を認め,本剤は2009年1月にニーマン・ピック病C型治療薬としてEUで承認された.本邦では,本剤は2011年3月9日に希少疾病用医薬品に指定された後,2012年3月30日に承認され,この難病に対して有用な治療手段となることが期待される.
著者関連情報
© 2013 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top