抄録
感音難聴の原因の大部分は内耳障害であり,多くは難治性である.その理由として内耳の感覚細胞である有毛細胞が再生しないためである.再生医療を含めて新しい治療が求められている.そのような治療が期待されている中で,内耳局所に薬物や遺伝子を投与する方法が必要となる.局所投与は,内耳に高濃度に薬物を送れる上に,全身の副作用のリスクを軽減するという利点がある.全身に副作用が生ずる危険性の高い薬物や遺伝子を投与する上では欠かせない投与法である.現在,臨床では突発性難聴などの急性内耳障害に対するステロイドの内耳局所投与に関して報告されているが,内耳への薬物動態,遺伝子治療に関する可能性に関する報告は少ない.そこで本稿では,内耳の解剖学的特徴を踏まえた局所投与について,局所投与における薬物動態,動物実験の内耳へ投与された遺伝子運搬体(ベクター)に関する過去の報告に基づいて,臨床応用される際にどのような内耳疾患に適応があるかについて述べる.