日本薬理学雑誌
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総説
ムスカリン性アセチルコリン受容体の構造と機能制御
芳賀 達也
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2013 年 141 巻 6 号 p. 321-326

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抄録

ムスカリン性アセチルコリン受容体について,その概略,最近決定されたM2サブタイプ(ムスカリンM2受容体)の立体構造,受容体の細胞内移行,創薬の対象としてのアロステリックサイト,などについて解説した.ムスカリン受容体は,ロドプシン,βアドレナリン受容体と共に,Gタンパク質共役受容体(GPCR)のモデルとしての役割を担ってきた.ムスカリンM2受容体の細胞膜貫通構造は,ロドプシンやβアドレナリン受容体のそれとよく似ており,同じような機構で働くと推測される.ムスカリン受容体の細胞内第3ループ(I3)は,特徴的に長く,フレキシブルな構造を持ち,受容体のアゴニスト依存性リン酸化・細胞内移行に寄与する.細胞外ループもムスカリン受容体に特徴的な構造をしており,アロステリックサイトを構成する.アロステリックサイトに働くリガンド,特にM1受容体特異的なPositive Allosteric Modulator(PAM)はアルツハイマー病の,M4特異的なPAMは統合失調症の薬となることが期待されている.

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