日本薬理学雑誌
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神経細胞障害性ストレスに対する生体応答
『神経系再構築とミクログリア』 ニューロン変性後に活性化するニューロン新生シグナル―ミクログリアの関与―
米山 雅紀荻田 喜代一
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2013 年 142 巻 1 号 p. 17-21

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抄録

哺乳動物成体脳には,ニューロン前駆細胞(神経幹細胞)が存在して新たなニューロンが生み出される(ニューロン新生).また,脳虚血などのニューロン変性が惹起されると,ニューロン前駆細胞が増殖してニューロン新生が促進されることも知られる.一方,脳内の免疫担当細胞であるミクログリアは,脳傷害時に活性化されて病巣部への蓄積と活性化が認められる.我々は,有機スズ化合物トリメチルスズをマウスへ投与すると,海馬歯状回選択的ニューロン毒性を示して歯状回顆粒細胞層の脱落が認められ,その後に同部位においてnestin陽性細胞(神経幹・前駆細胞)が多数出現することおよび顆粒細胞層が再生することを見出し,「海馬歯状回顆粒細胞層脱落・再生モデル動物」を提案している.本モデル動物において,歯状回ニューロン新生における活性化ミクログリア関連因子およびそのシグナル経路について解析した.顆粒細胞層脱落後の再生初期段階に,Iba-1陽性細胞(ミクログリア)の活性化およびTNFαの発現増加が観察される.さらに,nestin陽性細胞ではNF-κB p65の核移行がみられる.また,ミクログリア活性化抑制薬のミノサイクリン処置は,Iba-1陽性細胞およびTNFαの増加とNF-κB p65の核移行を抑制する.これらの事実は,海馬歯状回顆粒細胞層脱落後のニューロン新生促進メカニズムの一部にミクログリア活性化によるNF-κBを介したシグナルが関与することを示唆するものであり,ミクログリアの制御メカニズム解明がニューロン変性後のニューロン新生促進を介した新たな治療法開発の基盤となるとともに再生医学の発展に寄与することが期待される.

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