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日本薬理学雑誌
Vol. 142 (2013) No. 1 p. 9-12

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http://doi.org/10.1254/fpj.142.9

神経細胞障害性ストレスに対する生体応答

脳梗塞は,以前に比べ死亡率が減少したが,重篤な後遺症を伴うことが多く新規脳保護薬の開発が望まれている.我々は,最近,様々な疾患において注目されている小胞体ストレスに着目し,脳梗塞における小胞体ストレスの関与について,マウス総頸動脈を一過性に結紮する前脳虚血モデルにおいて検討するとともに保護薬の探索を行った.まず,再灌流後に脳切片を作成して観察したところ,48時間後までは異常を認めなかったが,72時間後に海馬CA1領域に領域特異的な細胞障害が認められた.モデルマウス海馬においては,細胞障害に先立って,小胞体ストレスによって誘導される分子シャペロンであるGlucose-regulated protein 78(GRP78)および小胞体ストレス誘発細胞死に関連するC/EBP homologous protein (CHOP)とcaspase-12の活性化体であるcleaved-caspase-12の発現上昇が認められた.GRP78およびcaspase-12の発現は,海馬CA1領域の錐体細胞層およびアストロサイトを含む周囲の細胞で認められたが,CHOPの発現は錐体細胞層に限局していた.抗腫瘍性抗生物質であるミスラマイシンは,抗腫瘍作用を示すより低用量(50~150 μg/kg,i.p.)で72時間後に観察される細胞障害を用量依存的に回復させた.また,再灌流2~3週間後に,長期増強現象(LTP)が低下したが,ミスラマイシン(150 μg/kg,i.p.)の投与は,このLTPの低下も顕著に抑制した.以上より,虚血再灌流(I/R)負荷により,海馬CA1領域において,領域特異的に小胞体ストレスが誘発され,CHOPおよびcleaved-caspase-12の発現上昇を伴う神経細胞死が引き起こされることが明らかとなった.また,ミスラマイシンが,細胞障害を顕著に抑制することが明らかとなり,新規保護薬のリード化合物となる可能性が示された.

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