抄録
この15年来,抗がん剤領域治療において分子標的薬の出現に伴い個別化医療が臨床の現場において進展してきた.その実現には分子標的薬の開発のみならず,コンパニオン診断薬の同時開発が不可避になり,製薬会社はその両者の開発を鋭意進展させている.これらはがん細胞のheterogeneityへの対策であり,この間分子レベルでのメカニズムが解明されてきたことによることが大きい.一方ではこの間ベバシツマブなどの血管新生阻害作用を持つ分子標的治療薬も承認がなされているが,当初期待していたものとは異なり自然耐性化や獲得体制化の存在も報告されるようになってきた.したがって血管新生阻害剤に対してもがん細胞を標的とする分子標的治療薬と同様に効果が期待できる患者層を選別する必要性が明らかとなっている.そのため前臨床,臨床でのトランスレーショナル研究の重要性がますます高まっているため,本稿にてその必要性となる背景と前臨床研究にて実施した結果を記載する.