日本薬理学雑誌
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特集 受容体シグナルによる幹細胞制御
多能性幹細胞の機能調節に関わる細胞膜受容体
石塚 俊晶渡邊 康裕
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2014 年 144 巻 1 号 p. 13-16

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抄録

多能性幹細胞の多分化能の維持,増殖,あるいは特定の細胞への分化誘導には,いくつかの細胞膜受容体を介したシグナルの関与が明らかになっている.マウス多能性幹細胞における多分化能維持および増殖には,leukemia inhibitory factor(LIF)受容体を介したJak/Stat3 の活性化が重要であり,ヒト多能性幹細胞では,fibroblast growth factor 2(FGF2)受容体シグナルの重要性が指摘されている.我々は,FGF2 非存在下のヒト人工多能性幹細胞(iPS 細胞)において,α1-アドレナリン受容体やアンジオテンシンtype 1 受容体といったGq 共役型受容体を刺激し,PKC,MEK/ERK およびPI3K/Akt の活性化により,細胞増殖促進作用が得られることを見出した.また,多能性幹細胞から心血管前駆細胞への分化促進には,bonemorphogenetic proetin(BMP)/Smad シグナルが重要であると報告されている.我々は,ヒトiPS 細胞をβ-アドレナリン受容体アゴニストで刺激すると,BMP-4 やアクチビンA による心血管前駆細胞への分化誘導がさらに促進されることを見出し,その作用にPKA やp38MAPK の活性化が関与していることを明らかにした.一方,Smad シグナルは,多能性幹細胞から神経前駆細胞への分化に抑制的に働くのに対し,セロトニン5-HT4 受容体およびβ-アドレナリン受容体の刺激を介したcAMP/PKA シグナルは,多能性幹細胞から神経前駆細胞への分化増強に寄与していることが示唆された.このように,受容体シグナルの特異的制御により,より効率的に多能性幹細胞を増殖・分化させることができれば,あらゆる臓器・組織における幹細胞治療をより早期により有効に行える可能性がある.その意味でも,多能性幹細胞の薬理学的制御に関する研究が,今後の再生医療研究に与える影響は少なくないと考えられる.

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