抄録
肘頭骨折のプレート固定術後に,より近位での粉砕骨折をきたしFiber Wire ® を用いてpull-out suture法を行った一例を報告する.68歳女性,転倒による右肘打撲にて受傷.単純X線像で肘頭粉砕骨折を認め,ロッキングプレートを用いて骨接合術を行った.術後27日目,右肘を伸展位の状態で手をつき再度転倒.単純X線像で初回骨折部よりも近位での再骨折を認めた.再受傷後8日目,上腕三頭筋腱にFiber Wire ® を縫合しpull-out suture法にて骨折部を固定した.術後5か月経過時に単純X線像で骨癒合を認めた.肘関節可動域は屈曲120度,伸展-20度であり疼痛はない.骨粗鬆症が明らかな高齢者の肘頭骨折では,術後再骨折発生のリスクがあるため,初回手術時にFiberWire ® などの破断強度の高い縫合糸を用いた補助縫合の追加も考慮する必要があると思われた.