日本薬理学雑誌
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生活習慣病と循環器疾患研究の新展開
新規アディポサイトカインomentinは肥満症による高血圧症治療の新たな標的となり得るか?
風間 恭輔岡田 宗善山脇 英之
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2015 年 145 巻 2 号 p. 65-69

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抄録
これまで脂肪組織は,単にエネルギーを蓄える貯蔵庫のようなものと考えられていた.しかし近年,脂肪組織は様々な生理活性物質(サイトカイン)を分泌することが認識されるようになり,これらはアディポサイトカインと呼ばれている.肥満により肥大化した脂肪組織において,アディポサイトカインの分泌は増減する.その結果,血中アディポサイトカインのバランス(善玉vs.悪玉)は不均衡となり,高血圧症や2型糖尿病,動脈硬化症などメタボリックシンドロームに関わる疾患の発症リスクが高まる.Omentinは2005年に大網脂肪組織中で同定された,313個のアミノ酸からなる比較的新規のアディポサイトカインである.Omentinは健常体では皮下脂肪よりも内臓脂肪組織に多く発現しており,近年の疫学調査により,その血中濃度は肥満症や高血圧症,2型糖尿病,アテローム性動脈硬化症,慢性腎不全,心臓病などの発症率と負の相関関係を示すことが明らかになった.よってomentinは,合併症を発症しない単なる肥満からメタボリックシンドロームへの移行の鍵を握る,重要なアディポサイトカインであると推察される.しかし,omentinの生理的あるいは病態生理的役割に関する基礎的な検討は全くなされてこなかった.本稿ではomentinと高血圧症の関連に焦点を当て,高血圧発症・進展の病態プロセス(in vitro)と血圧(in vivo)に及ぼす影響に関する当研究グループの成果を中心にomentinの病態生理的役割について概説する.Omentinはこれまでに検討した様々な病態プロセスに対して抑制的に働くことから,omentinは肥満による高血圧症治療のターゲットとなり得る非常に魅力的な分子である可能性が示唆される.
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© 2015 公益社団法人 日本薬理学会
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