日本薬理学雑誌
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ATP感受性Kチャネルを標的とした有用な疾患治療戦略の発展
神経ATP感受性Kチャネルを標的とした新しい神経障害性痛治療の可能性
河野 崇
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2015 年 146 巻 1 号 p. 10-15

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抄録
ATP感受性K(KATP)チャネルは,1983年に心筋細胞で最初に発見されて以来,多くの代謝活性の高い組織でその発現が確認されてきた.また,1990年代には,それらの分子構造が相次いで明らかとなっている.KATPチャネルは,細胞内ATPにより抑制され,ADP/ATP比の上昇によって活性化することから,細胞の代謝状態と細胞の電気的興奮を関連させる“metabolic sensor”としての生理的役割を果たす.多くの組織において,代謝ストレス時のKATPチャネルの活性は,細胞膜を過分極側に誘導し,細胞の電気的興奮を抑え,臓器保護的に働く.また,KATPチャネルは,スルフォニル尿素薬(SU剤)により特異的に抑制され,ニコランジルなどのKチャネル開口薬で活性化される.近年,われわれは,神経系KATPチャネルが中枢神経系だけでなく一次知覚ニューロンにも発現し,神経の興奮および神経伝達物質の放出に関与していることを明らかとした.また,後根神経節には神経細胞膜以外にも細胞質内,核膜,軸索,および衛星細胞にもKATPチャネルの発現が認められる.さらに,神経障害性痛モデル動物を用いた検討から,神経障害後に生じる一次知覚ニューロンのKATPチャネルの発現・活性変化は,痛覚過敏様行動の発生と相関することも明らかとした.これらの結果は,神経KATPチャネルが疼痛治療の標的となる可能性を示唆する.ここでは,感覚神経に発現するKATPチャネルに焦点を当て,慢性痛の病態における役割について概説したい.
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© 2015 公益社団法人 日本薬理学会
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