抄録
膀胱がんは簡便な診断法がないことから,多くの場合,治癒困難な進行がんとして発見される.そのため,経尿道的膀胱腫瘍切除術(transurethral resection of the bladder tumor:TUR-Bt)による内視鏡的治療を行った患者のおよそ8割が2年以内に再発する.治療後,侵襲的な膀胱鏡を用いる検査を3ヵ月ごとに行う必要がある.膀胱がんの平均発症年齢は70を越えており,患者の大部分を占める高齢者にとって膀胱鏡検査はとても苦痛な検査となっている.我々は基底膜を構成する細胞外マトリックスであるラミニン332(旧名:ラミニン5)の構成鎖であるラミニンγ2鎖が単鎖で悪性がんの浸潤先進部で発現亢進していることを見出した.現在までに,ラミニンγ2単鎖(γ2単鎖)は浸潤がんのバイオマーカーとして考えられている.最近,我々は,①γ2単鎖が膀胱がん組織で発現亢進していること,②筋層非浸潤性膀胱がん(none muscle invasive bladder cancer:NMIBC)を含む表在性膀胱がん患者尿中にγ2単鎖が存在することを見出し,さらに,③尿中のγ2単鎖を定量するためのELISA測定系を確立した.本稿では,尿中のγ2単鎖がNMIBCを診断するための有効なバイオマーカーの候補である可能性について報告する.