日本薬理学雑誌
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ROS/Gasotransmitterを介するシグナリングと病態
消化管炎症の病態におけるNADPHオキシダーゼ1(NOX1)の役割
加藤 伸一
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2016 年 147 巻 1 号 p. 18-22

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抄録
NADPHオキシダーゼは生体内のおもな活性酸素(ROS)の産生酵素であり,これまでに数種のホモログが同定されている.NADPHオキシダーゼ1(NOX1)は非食細胞型ホモログとして同定された分子種であり,全身に広く分布している.消化管においては,NOX1は特に下部消化管上皮に高発現していることが知られているが,生理学的および病態生理学的役割については不明な部分が多い.著者らは,5-FU誘起腸炎およびTNBS誘起大腸炎の病態におけるNOX1/ROSの役割を明らかにするため,NOX1遺伝子欠損マウスを用いて検討した.これら腸炎の発生は,野生型マウスと比較してNOX1遺伝子欠損マウスではいずれも有意に抑制された.また,腸炎発症時に観察される炎症性サイトカイン発現の増大もNOX1遺伝子欠損マウスでは抑制された.これらの結果はNOX1/ROSが腸炎の病態において,特に炎症性サイトカイン発現の増大過程に関与していることを示唆している.これまでNOX1は消化管では上皮細胞に発現すると考えられてきたが,興味深いことに著者らはNOX1が固有粘膜層に分布するマクロファージにも発現していることを見出した.マクロファージに発現しているNOX1は,ROS産生を介して炎症性サイトカイン発現増大に寄与しているものと推察される.一方,DSS誘起大腸炎を用いた検討から,NOX1/ROSは上皮バリア機能の調節を介して保護的に作用している可能性を示唆する結果を得た.このようにNOX1/ROSは消化管炎症の病態において,炎症惹起と粘膜保護(抗炎症)という相反する機能を有しているものと推察される.
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© 2016 公益社団法人 日本薬理学会
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