日本薬理学雑誌
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特集 漢方薬理学:漢方薬の新たな薬理学的メカニズム探究
抗アレルギー天然物医薬,苦参の有効成分,(-)マーキアインの分子薬理機構
福井 裕行水口 博之柏田 良樹根本 尚夫北村 嘉章武田 憲昭
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2016 年 147 巻 3 号 p. 148-151

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抄録

ヒスタミンH1受容体には,受容体刺激による遺伝子発現亢進を介する受容体アップレギュレーション機構が存在することを見いだし,タンパク質キナーゼC-δ(PKCδ)活性化を介することを明らかにした.臨床研究により,この機構が花粉症の鼻過敏症状悪化に関与し,ヒスタミンH1受容体遺伝子が疾患感受性遺伝子であることが示唆された.鼻過敏症モデルラットに対する抗ヒスタミン薬および抗アレルギー天然物医薬である苦参エキスの投与は,共に鼻過敏症状の改善とそれに相関した鼻粘膜ヒスタミンH1受容体mRNAレベル上昇の抑制を引き起こした.苦参エキスに含まれるヒスタミンH1受容体遺伝子発現抑制物質として(-)マーキアインを同定し,鼻過敏症モデルラットの鼻過敏症状に対する改善作用を明らかにした.(-)マーキアインの作用点がPKCδ活性化抑制であり,標的分子としてヒートショックタンパク質-90(Hsp90)の同定に成功した.Hsp90とPKCδは複合体を形成し,(-)マーキアインは複合体を解離させることにより,PKCδシグナルを核に伝えないと考えられた.さらに,Hsp90抑制薬が,鼻過敏症モデルラットの鼻過敏症状および鼻粘膜ヒスタミンH1受容体遺伝子発現亢進に対する改善作用を示した.以上の結果より,ヒスタミンH1受容体遺伝子が花粉症の感受性遺伝子であり,抗ヒスタミン薬はH1受容体のレベルで,苦参エキスはPKCδのレベルで改善作用を発揮することが示唆された.

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