日本薬理学雑誌
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特集 幹細胞研究と臨床利用の進歩
ヒトiPS細胞を用いた骨格筋細胞分化におけるmicroRNA-494の役割
岩﨑 広高今村 武史
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2016 年 147 巻 5 号 p. 260-263

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抄録
骨格筋組織は体重の約40%を占める生体内最大の臓器であり,基礎代謝に占める割合も22%と最大の代謝器官である.基礎代謝を介して骨格筋萎縮は肥満や糖尿病などの生活習慣病の成立に強く関連しており,Ⅱ型糖尿病ではⅠ型,Ⅱa型筋線維の減少,サルコペニアではⅡa型線維の減少が報告されている.このように筋線維組成の制御は,生活習慣病や筋疾患に対する新規治療として有望である.ただし,ヒト骨格筋線維特異的な筋分化過程は不明の点が多い.本研究では,ヒト多能性幹細胞を成熟骨格筋細胞に分化誘導する骨格筋細胞分化モデルを用いて,筋線維特異的な分化機序の解明を目的とした.分化初期に高発現が認められたmicroRNA(miR)-494は,骨格筋細胞への分化誘導に従い有意な発現量減少が認められた.miR-494過剰発現実験による機能解析より,miR-494は好気的代謝活性の高いⅡa型筋線維形成を有意に抑制し,同時に細胞の酸素消費率を低下させることが見出された.即ち,miR-494作用が過剰である場合は,Ⅱa型筋線維タンパク質発現が低下することにより,好気的代謝活性の高い骨格筋線維が減少すると考えられた.以上のように,本研究ではヒトiPS細胞由来の骨格筋細胞分化システムを用いることにより,筋線維型特異的な骨格筋細胞分化調節機序の一端をヒト細胞において初めて明らかにした.
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© 2016 公益社団法人 日本薬理学会
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