日本薬理学雑誌
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受賞講演総説
脳動脈瘤形成機序の解明に基づく新規薬物治療法開発への展望
青木 友浩
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2016 年 148 巻 2 号 p. 86-91

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抄録

脳動脈瘤は脳血管分岐部に生じる嚢状の病変であり,致死的なくも膜下出血の主要な原因として重要な疾患である.くも膜下出血の予防のためには,日常臨床で多く発見される未破裂脳動脈瘤の破裂予防の治療が必要である.しかし現時点で脳動脈瘤に対する薬物治療法が存在しないために,多くの症例が無治療となっていることが社会的に大きな問題である.このような現状から,脳動脈瘤形成・増大・破裂機序の解明とその知見に基づく新規薬物治療法開発が急務である.一連の主にモデル動物を使用した近年の解析から,脳動脈瘤形成・増大が,脳動脈瘤の誘因と従来考えられていた血流ストレス負荷に惹起される炎症反応に制御されており,それゆえ脳動脈瘤が血流ストレス依存的な脳血管壁の慢性炎症性疾患として定義できることが明らかとなった.このことから,脳動脈瘤が動脈硬化,がんや耐糖能異常といった社会的に重要な種々の疾患と共通の病態形成基盤を有することが判明し病態理解が大きく進んだ.また,それら炎症反応を担う細胞種としてマクロファージが,因子としてNF-κB活性化やCOX-2-PGE2-EP2経路が同定された.さらにこれらの因子を阻害することでモデル動物での病態抑制が可能であることが示された.これらの知見を発展させ,NF-κB活性化を抑制するスタチン製剤やCOX-2-PGE2-EP2経路を遮断するNSAIDsの服用によりヒトの脳動脈瘤症例での破裂を抑制し得るという臨床研究の結果も報告された.これらのことから,脳動脈瘤に対して破裂予防のための薬物治療が可能であることが示唆された.このように近年の脳動脈瘤形成・増大・破裂機構の解析から脳動脈瘤の薬物治療法開発の可能性が見出され,脳動脈瘤治療は新たな局面を迎えつつある.

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