2016 年 148 巻 2 号 p. 81-85
ミクログリアは脳のマクロファージ様細胞として免疫機能を担当していることが古くから知られていたが,系統的に発生過程の早い時期にマクロファージと分かれていることが明らかにされた.胎生期ミクログリアはほとんどが突起を持たない丸いamoeboid型のミクログリアであるが,生後初期にamoeboid型のまま爆発的に増加し最大数に達し,発達がすすむにつれamoeboid型のミクログリアは減少し成体においてほとんどが静止型となる.脳室下帯(subventricular zone:SVZ)は一生を通じて神経新生やグリア新生が起こる領域であるが,生後初期は特に新生細胞の種類が激しく入れ替わる時期である.主要な投射神経は胎生期に,アストロサイトは胎生期から生後初期まで,オリゴデンドロサイトは胎生後期から生後初期にかけて,介在神経は胎生後期から成体に至るまで新生が続いている.そこで我々はステレオジーイメージングを大幅に簡便化し,生後初期から生後30日齢(postnatal day 30:P30)までSVZ周辺のミクログリアを観察したところ,生後初期に活性化型のミクログリアがSVZの特に中心部に集積していることを発見した.さらに,このミクログリアがIL-1β,IL-6,TNFα,IFNγの相補的な作用を介して神経新生,オリゴデンドロサイト新生を促進していることを明らかにした.この簡易ステレオロジーイメージング法は特定細胞の経時的脳内分布の概略をつかむためには非常に有用なツールと言える.そこで,簡易ステレオロジーイメージング法プロトコルを紹介し,生後初期SVZに集積したミクログリアの分布と役割について考察を加える.