日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集 肺循環薬理学研究の最前線
肺高血圧症病態形成における新たな分子機構―炎症の関与について―
瀧原 圭子
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 148 巻 5 号 p. 239-243

詳細
抄録

肺高血圧症(PH)はさまざまな病態に関連して発症することが知られており,第5回ワールドシンポジウムによる肺高血圧症の臨床分類(Nice分類)では病因・病態が類似していると考えられる症例を5つの群に分類している.しかしながら,第5群には「詳細不明・複合的要因による肺高血圧症」として,未だ発症の因果関係が明確でない多様な疾患も数多く含まれている.肺動脈性肺高血圧症(PAH)の病態は,肺動脈のれん縮と器質的病変に由来し,肺動脈病変は血管構成細胞の異常増殖を伴う血管リモデリングにより形成される.肺動脈血管リモデリングには遺伝子異常だけでなく,構成細胞の増殖を制御するさまざまな増殖因子やサイトカイン,そしてこれらの情報伝達系の異常が深く関与していると考えられているが,その発症・進展過程に「炎症・感染」というプロセスも大きく関わっていることが近年指摘されている.Human immunodeficiency virus(HIV)感染だけでなく,他のウイルス感染により引き起こされた「慢性炎症」がPAH発症に関与している可能性を示唆する症例も相次いで報告されている.また,低酸素に暴露されることによりさまざまな炎症性サイトカインの産生が肺組織において増強していることも観察されている.PAH病態を理解する上で,bone morphogenic protein(BMP)シグナルと血管作動性サイトカインや増殖因子との機能的関連だけでなく,炎症性サイトカインとの関連を含めた新たな“multiple-hits theory”を理解することが必要と思われる.

著者関連情報
© 2016 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top