日本薬理学雑誌
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特集 SGLT2 阻害薬 : 症状からの創薬、そして治療へ
SGLT2阻害薬(カナグリフロジン)によるSGLT阻害機序と消化管での作用
栗山 千亜紀
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2016 年 148 巻 5 号 p. 245-252

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抄録

ナトリウム/グルコース共輸送体(SGLT)2は,腎近位尿細管においてグルコースの再吸収を担う主要な輸送体である.田辺三菱製薬が創製したカナグリフロジン水和物(以下,カナグリフロジン,製品名:カナグル®錠(国内),INVOKANA®錠(海外))は,2型糖尿病治療薬として米国で初めて承認されたSGLT2阻害薬であり,グルコースの再吸収抑制による尿中排泄促進を機序とした血糖降下作用を示す.我々は,SGLT2及びSGLT1の安定発現細胞を用いて,カナグリフロジンのSGLTへの作用キネティクス及び阻害メカニズムを解析した.カナグリフロジンは,競合的にSGLT2及びSGLT1を阻害し,SGLT1に対して約200倍と中程度のSGLT2選択性を示した.また,14C標識したカナグリフロジンをSGLT2発現細胞に添加すると,Na依存的且つ温度依存的な放射活性の上昇を示すことを見出した.これは,カナグリフロジンのSGLT2を介する細胞内への移行を反映しているものと考えられた.さらに,パッチクランプ法のホールセルモードを用いて,細胞内外からカナグリフロジンを作用させ,[14C]α-メチル-d-グルコピラノシド(AMG)輸送に伴う内向き電流に対する効果を検討したところ,SGLT2及びSGLT1のいずれに対しても細胞外,即ち生体においては管腔側から阻害することが明らかになった.これらの事実と血漿中遊離型薬物濃度から,臨床用量においてカナグリフロジンはSGLT2を十分阻害するが,腎SGLT1には作用しないと考えられた.また,小腸に発現するSGLT1については,投与直後,局所的に管腔側薬物濃度が上昇するため一過性に阻害され,糖質吸収遅延作用につながることが示唆された.以上より,カナグリフロジンは,薬剤特性により,腎における糖再吸収のみならず,小腸における一過性の糖質吸収遅延作用を併せ持つことが示された.

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