2017 年 149 巻 5 号 p. 240-246
タンパク質の全電子計算が可能なフラグメント分子軌道(FMO)法によって,創薬の標的タンパク質とリガンドとの複合体構造から,それらの間の相互作用エネルギーを量子論的に計算することができ,これまでにない高精度の構造ベース創薬が可能になってきている.FMO法にもとづく「FMO創薬」は,新規化合物の精密な設計や合理的なリード化合物の最適化,インシリコスクリーニング,さらにはビッグデータに基づく創薬へと繋がることが期待されている.現在はFMO創薬の実現に向けて,産学官連携のFMO創薬コンソーシアムを母体として,スーパーコンピュータ「京」を活用した大規模な手法の検証と開発を行っており,2016年末までに700を超えるタンパク質-リガンド複合体構造のFMO計算を実施済みである.本稿ではFMO法の概要と応用例,最近のコンソーシアムの活動について概説する.