日本薬理学雑誌
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総説
神経変性疾患と生体微量金属代謝
栗田 尚佳位田 雅俊保住 功
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2017 年 150 巻 1 号 p. 29-35

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抄録

亜鉛(Zn),銅(Cu),鉄(Fe)などの生体内微量金属元素は,酵素をはじめとする多くのタンパク質の活性中心となるため,生命活動を行う上で必要不可欠である.それぞれの元素において,過剰症,欠乏症が存在するため,生体内外における適切な調節が必要である.脳内においても,これらの微量元素は,神経系の調節に重要な役割を果たしている.したがって,微量金属元素の生体内恒常性の破綻は,脳神経系への影響を引き起こす可能性がある.これまでにアルツハイマー病(Alzheimer’s disease),パーキンソン病(Parkinson’s disease)および筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)などの神経変性疾患の発症と,微量金属元素の恒常性変化との関連が示唆されている.これらの知見を基に,金属キレート剤についての,疾患モデルを用いた治療研究も成されている.本総説では,神経変性疾患と金属トランスポーターをはじめとする調節因子との関わりについて,我々の知見を含めて,細胞内ストレス応答および生体内微量金属代謝異常という観点から概説する.

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