日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
世界初の静注CaSR作動薬エテルカルセチド塩酸塩(パーサビブ®静注透析用)の薬理学的特性と臨床効果
原田 一恒井上 敦人山内 昭典藤井 章史
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2017 年 150 巻 2 号 p. 98-113

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抄録

エテルカルセチド塩酸塩(以下,エテルカルセチド)は,カルシウム感知受容体(CaSR)作動薬としては世界初の静注製剤であり,二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)の新規治療薬である.透析終了時の返血時に透析回路静脈側から医師の管理下で確実に投薬できることから,コンプライアンスの向上や患者の服薬負担の軽減に繋がる.また,代謝酵素による影響をほとんど受けず,薬物相互作用のリスクが低い.エテルカルセチドは,活性に寄与する7つのD体アミノ酸配列(D体アミノ酸ペプチド骨格)及びそのN末端のD体のシステイン(Cys)にL体のCysがジスルフィド結合したアミノ酸配列で構成されている.エテルカルセチドのD体アミノ酸ペプチド骨格が,副甲状腺に存在するCaSRに結合することで,アロステリック効果により細胞外Caのシグナルを増強し,PTH分泌を抑制する.活性に寄与するD体アミノ酸ペプチド骨格は生体内で代謝を受けず,透析患者においては次透析時に除去されるまで血中濃度が安定し,持続的な効果が期待できる.薬効薬理試験では,in vitroにおけるCaSR作動活性及びPTH分泌抑制作用が確認されている.エテルカルセチドは,CaSRに特徴的なアミノ酸配列である482番目のCysに結合することから,CaSRへの選択性が高い.In vivoでは,SHPT病態を発症させた慢性腎障害モデルラットにおいて,血中PTH低下作用に加えて,SHPTで併発する諸症状(副甲状腺過形成,骨障害及び異所性石灰化)の抑制作用が確認されている.エテルカルセチドは,国内外の臨床試験において血液透析下のSHPT患者に対する有効性及び安全性が確認されており,SHPT治療における新たな選択肢となることが期待される.国内では2016年12月,海外では欧州で2016年11月,米国で2017年2月に製造販売承認を取得しており,日米欧でほぼ同時期に使用が可能になった.今後,エテルカルセチドが臨床で広く使用され,エビデンスが蓄積されていくとともに,SHPT患者治療に福音をもたらすことが期待される.

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