日本薬理学雑誌
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特集:難治性疾患の治療に向けた基礎研究
アルツハイマー病理を標的とした分子イメージングプローブの開発
岡村 信行原田 龍一古本 祥三中村 正帆谷内 一彦工藤 幸司
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2017 年 150 巻 4 号 p. 172-176

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抄録

アルツハイマー病患者の脳内では,アミロイドβタンパク質が発症前から凝集・蓄積してシナプス機能障害の原因となるほか,タウタンパク質の蓄積を介して神経変性をもたらすと考えられている(アミロイド仮説).本仮説が正しければ,アミロイドβタンパク質およびタウタンパク質の凝集・蓄積を阻止することでアルツハイマー病の進行を阻止できるはずである.アルツハイマー病の根本治療法を確立するためには,治療薬の開発だけでなく,上記タンパク質蓄積量を非侵襲的にモニタリングするためのバイオマーカーが必要となる.本目的において,タンパク質特異的PETプローブを用いた生体イメージングの果たす役割は大きい.アミロイドPETやタウPETにおいては,線維化タンパク質が形成するクロスβ構造に対する親和性を有する低分子化合物を生体用プローブとして使用する.アミロイドβタンパク質を標的としたプローブは既存の病理用染色剤をベースに開発されてきたが,他のミスフォールディングタンパク質を標的としたプローブを開発するためには,新たなシード化合物の探索が求められる.プローブ候補化合物の結合性を証明するには,疾患脳サンプルを用いたナノモル濃度域での結合親和性および選択性の評価が必要である.本稿では,筆者らがこれまで進めてきた分子イメージングプローブの開発研究を紹介し,プローブ開発における課題を考察する.

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