日本薬理学雑誌
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実験技術
波動圧力負荷装置を用いた血管平滑筋細胞のメカニカルストレス応答の解析
町田 拓自飯塚 健治平藤 雅彦
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2017 年 150 巻 4 号 p. 195-200

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抄録

血管の機能は,生理活性物質や神経刺激のみならず血流及び拍動に伴うメカニカルストレスによっても調節されており,このメカニカルストレスの異常が循環器疾患の進展やさらなる関連疾患の発症に深く関わる.血管壁へ負荷されるメカニカルストレスは,大きくずり応力,伸展,圧力に分類できるが,この分野の研究においてはずり応力や伸展による細胞機能解析が先行している一方,圧力による細胞機能への影響は未だ不明な点が多い.血管内圧は,最高血圧と最低血圧の間を周期的に変動し,高血圧症や局所での病変部位においてはその範囲が大幅に変化する.そこで我々の研究室では,高血圧のモデルを想定する場合においても最高血圧と最低血圧をそれぞれ区別する必要があると考え,上限と下限を自由に設定することができ,さらにこれらの設定範囲の間で内圧が周期的に変動する波動圧力を培養細胞に負荷することができる装置(波動圧力負荷装置)を考案した.波動圧力負荷装置は,培養ディッシュが設置される加圧タンク,真空ポンプ,加減圧コントローラー,圧力トランスミッタならびにインキュベーターより構成される.加圧タンク内の圧力を圧力トランスミッタによりモニタリングし,圧力の下限に達すると加減圧コントローラーにより圧力が負荷され,上限に達すると圧力負荷を止めることでタンク内の細胞に周期的に圧力を負荷する.これまでにこの装置によって作製した収縮期高血圧を想定した高血圧モデル細胞において,細胞内エネルギー代謝が促進されて増殖が促進すること,また,インターロイキン-1β刺激による誘導型一酸化窒素合成酵素発現が抑制されること等の圧力による細胞応答の変化を見出した.圧力負荷による高血圧モデル細胞の機能を解明することで,治療薬の新たな作用機序の解明や新薬開発への足がかりとなるような知見が得られることが期待される.

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