日本薬理学雑誌
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特集:日本における動物実験代替法の新たなる技術展開
多能性幹細胞を用いた動物実験代替法開発
斎藤 幸一鈴木 紀之小林 久美子
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2018 年 151 巻 2 号 p. 62-68

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抄録

化学物質の安全性評価において動物実験は大変重要な位置づけを占めてきた.しかし,欧州の化粧品開発における動物実験の全面禁止に見られるような動物福祉の高まり等により,近年,動物実験代替法の開発が非常に重要となっている.動物実験代替法開発において,刺激性試験や感作性試験といった局所毒性に関する試験法の開発が先行している.一方,慢性毒性,発生毒性等の全身毒性の代替法試験開発は開発途上にある.我々は培養細胞を用いた代替法開発において,細胞ソースとしてES/iPS細胞に代表される多能性幹細胞に着目し全身毒性の発生毒性や神経毒性の代替法研究を進めてきた.発生毒性の代替法試験としては,マウスES細胞の心筋分化過程を利用した簡便な代替法試験法であるHand1-Luc EST法と神経の分化過程を利用したTubb3およびReln-Luc EST法を開発した.また,最近Hand1-Luc EST法とTubb3およびReln-Luc EST法は組み合わせると発生毒性の予測精度が向上することを明らかにした.マウスES細胞由来の神経細胞を用いたin vitro神経毒性試験開発においてはハイコンテントイメージング技術を利用した神経突起伸展評価法,また,成熟後の神経機能の評価系として多点電極を用いた神経機能の影響評価法を開発した.その他,理化学研究所との共研で実施したヒトES/iPS細胞からの網膜組織への分化誘導法開発と,その成果を活用したヒトES細胞由来の網膜色素上皮細胞(RPE)を用いたin vitro光毒性試験開発の現状ついても紹介する.

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