日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集:てんかん研究の最前線―新たな治療薬を求めて―
DEPDC5,様々なてんかん発症を解き明かす新たな鍵
石田 紗恵子
著者情報
キーワード: DEPDC5, てんかん, 遺伝子, mTOR経路
ジャーナル フリー

2018 年 152 巻 6 号 p. 281-285

詳細
抄録

てんかんは,反復性の発作を特徴とする頻度の高い神経疾患の一つである.多くの場合,患者は抗てんかん薬の服用が長期間必要となる.しかしながら,患者の約30%は,抗てんかん薬の効かない難治性を示す.そのため,より効果的な新しい治療法の開発が急務となっている.焦点性てんかんは,神経の異常興奮が特定の脳部位に限局して発生し,その脳部位が司る機能に依存して様々な症状を示すてんかんであり,成人てんかんの約60%を占める.DEPDC5は,複数の焦点性てんかんに共通する原因遺伝子として同定された.これまで報告されている原因遺伝子の多くは,イオンチャネル関連遺伝子もしくは神経伝達物質受容体のサブユニットであるが,DEPDC5はそれらのどちらにも属しない.これまでの研究から,DEPDC5は,同じく焦点性てんかん原因遺伝子として同定されたNPRL2およびNPRL3とGATOR1複合体を形成し,細胞成長や増殖を制御するmTORC1経路を抑制することがわかっている.また,近年の動物モデルを用いた研究成果から,DEPDC5の神経系における機能の解明が進んでいる.DEPDC5は現在,焦点性てんかんにおいて,もっとも寄与度の高い原因遺伝子であり,かつ,既知の原因遺伝子とは異なる新たな原因遺伝子であることから,DEPDC5が様々なてんかん発症を理解する鍵となり,その機能解明が新しい治療法の開発に繋がることが期待されている.

著者関連情報
© 2018 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top