2018 年 152 巻 6 号 p. 275-280
てんかんは反復性の発作を主症状とする慢性の神経疾患であり,その罹患率は人口の1%にのぼる.近年,新たなてんかん治療の標的分子としてシナプス小胞タンパク質SV2A(synaptic vesicle protein 2A)が注目されている.SV2Aは神経伝達物質の活動電位依存性シナプス分泌を促進的に調節する機能がある.これまでの報告において,①Sv2a遺伝子をノックアウトした動物が重度のけいれん発作を発症すること,②SV2Aが抗てんかん薬レベチラセタムの脳内作用点であること,③SV2Aの脳内発現がさまざまなてんかん病態において変化することなどが示されている.さらに,ヒト(小児)においても,SV2A遺伝子の変異が難治性のけいれん発作,不随意運動障害,および発達遅滞を引き起こすことが示され,SV2Aがてんかん発症に関与する原因遺伝子であることが確認された.我々は最近,Sv2a遺伝子にLeu174Glnミスセンス変異を持つ新たなラットモデル(Sv2aL174Qラット)を作出し,てんかん原性の獲得調節におけるSV2Aの機能を解析してきた.その結果,Sv2aL174Qラットにおいては,てんかん原性の指標とされるキンドリング現象の獲得が加速・増強され,海馬や扁桃核における脱分極性GABA分泌が著しく低下することが明らかとなった.一方,グルタミン酸のシナプス分泌はSv2aL174Q変異によって影響を受けなかった.これらの結果は,SV2Aが大脳辺縁系のGABAシナプス分泌を調節することにより,てんかん原性の獲得を制御していることを示唆している.今後,SV2A-GABA系を特異的に促進する薬物を開発することによって,ヒト難治性てんかんの発症と進展を抑制できる新たな治療薬が開発できる可能性が期待される.