RANKL(receptor activator of NF-κB ligand)の発見は破骨細胞分化・活性化調節メカニズムの解明,骨代謝と免疫学をつなぐ研究領域(骨免疫学)の開拓,抗ヒトRANKL中和抗体(デノスマブ)の開発など大きなインパクトをもたらした.デノスマブは欧米をはじめ,日本を含めた多くの国で骨粗鬆症治療薬およびがん骨転移による骨病変の治療薬として臨床応用されており,今やブロックバスター(2017年度売上は39億ドル)になっている.破骨細胞分化に必須の絶対的因子であるRANKLを標的にした抗体医薬の切れ味は強力であり,多くの患者にとって福音となった.最近のトピックスとして,骨芽細胞が産生するRANKLが骨形成の調節に必要であること,RANKLとその受容体であるRANKの双方向性シグナルが骨芽細胞と破骨細胞の相互作用に重要な役割を果たすことが示され,筆者らが提唱してきたRANKLリバースシグナリング仮説が証明された.抗RANKLアゴニスト抗体など,骨芽細胞上のRANKLに結合して骨形成シグナルを入れる物質が新たな創薬候補となろう.一方,抗RANKL中和抗体が胸腺髄質細胞の分化・成熟を抑制することにより,がん免疫を増強することが明らかになりつつある.抗RANKL抗体はがん骨転移や骨粗鬆症などに対する骨病変の治療薬であるという概念を超えて,がん免疫増強を介したがん治療薬の可能性が見えてきている.