日本薬理学雑誌
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特集:進化する骨粗鬆症治療薬 国内患者1,300万人のQOL向上へ
副甲状腺ホルモン製剤の骨形成作用について
長谷川 智香宮本 幸奈山本 知真也網塚 憲生
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2019 年 153 巻 1 号 p. 16-21

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抄録

骨粗鬆症治療薬の副甲状腺ホルモン(PTH)製剤として,遺伝子組み換え型ヒトPTH[1-34]であるテリパラチドが用いられている.我が国においては,連日製剤と週1回製剤の2種類が存在しており,そのどちらも骨量を増加させ,また,骨折率を低下させることが報告されている.一般的にPTHを持続投与すると骨吸収を誘導するのに対して,PTH間歇投与では骨量増加につながることが知られている.その細胞学的メカニズムとして,PTHは骨芽細胞の前駆細胞である前骨芽細胞に対して細胞増殖を亢進する一方,成熟型骨芽細胞に対しては破骨細胞とのカップリングに依存して,骨形成を促進することが報告されている.さらに,我々は,PTH間歇投与の頻度(投与間隔)の違いにより,骨の細胞群の挙動が異なることを明らかにした.PTH高頻度投与では,成熟型骨芽細胞が活発に骨基質合成を行うだけでなく,前骨芽細胞の増殖が亢進して厚い細胞性ネットワークを形成し,その中で多数の破骨細胞が誘導されていた.その結果,高骨代謝回転の骨リモデリングにより骨形成が誘導されていた.しかし,PTH低頻度投与では,成熟型骨芽細胞による骨形成が亢進するが,前骨芽細胞はあまり増加せず,よって破骨細胞形成の誘導も上昇しなかった.この場合,骨リモデリングとミニモデリングの両方によって骨形成が誘導されることが明らかにされた.このように,PTH製剤の投与頻度が異なると,骨の形態や形成のされ方が違うことが強く示唆された.以上より,PTH製剤の投与頻度によって骨形成促進における作用機序が異なると思われる.

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