日本薬理学雑誌
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特集:創薬・再生医療を指向した幹細胞の階層性/系譜の分子理解
間葉系幹細胞の階層性・系譜の分子理解
河邊 憲司宝田 剛志
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2019 年 153 巻 2 号 p. 67-72

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抄録

間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell:MSC)は組織幹細胞の一種である.臨床研究に使用されるヒト骨髄由来培養MSCは免疫抑制作用を持つことで,様々な疾患への良好な治療成績が報告されている.しかしながら,生体個体レベルにおけるMSCの性質は不明な点が多く,MSCの系譜/階層性の分子理解はほとんど進んでいない.我々は,遺伝子改変マウスを使用した解析から,肢芽等の未分化間葉系組織に認められるpaired related homeobox 1(Prrx1)陽性細胞は,骨格形成過程の一時期に重要な役割を果たす幹/前駆細胞ポピュレーションを形成することを見出した.Prrx1陽性細胞内の不均一性を解析したところ,Prrx1陽性細胞には,幹細胞性の高いPrrx1Sca1集団と,分化指向性を持ったPrrx1Sca1集団が存在し,骨芽細胞分化系譜においては,Prrx1Sca1細胞,Prrx1Sca1細胞,Prrx1Sca1Osterix前骨芽細胞,そしてPrrx1Sca1TypeI Collagen成熟骨芽細胞が存在し,これらの細胞が順次分化・成熟することで骨形成が起きることがわかった.Runt-related transcription factor 2(Runx2)は,MSCから骨芽細胞へと分化する際に働く必須の転写制御因子である.Runx2コンディショナル欠損マウスを使用することで,Prrx1陽性細胞の骨芽細胞分化系譜においては,Prrx1Sca1細胞からPrrx1Sca1Osterix細胞になるまでの間に,骨形成のうえでRunx2が必須の役割を持つことが分かった.「どのような幹細胞が,どのような細胞となり,どのような機能に重要なのか?」を生体個体レベルで明らかにすることは,従来知られていなかったcell populationの同定だけでなく,疾患病態の理解や,新たな治療候補分子の発見につながる可能性がある.

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