2019 年 153 巻 4 号 p. 186-191
肝臓における薬物代謝は医薬品の体内動態に密接に関わり,シトクロムP450(P450)が主要な役割を果たしている.併用薬の薬物動態を変化させる薬物間相互作用(drug-drug interaction:DDI)は,薬物治療において用量調節や併用禁忌などの使用制限に繋がるため,医薬品開発においては構造展開が可能な期間に回避したいリスクファクターである.それゆえ近年の医薬品開発においては,創薬段階からDDIリスクを見積もり,DDIリスクの低い化合物の取得が重要となっている.P450誘導はDDI発現機序の1つであり,核内受容体の活性化が関わる.本稿では,酵素誘導の機序及び現在の酵素誘導評価手法を概説した後,我々が最近構築した,創薬段階に活用可能な新たなin silico手法による酵素誘導評価法を紹介する.