日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
新規ヒトサイトメガロウイルス感染症予防薬であるレテルモビル(プレバイミス®)の薬理作用及び臨床効果
小川 真実江戸 淑子
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2019 年 153 巻 4 号 p. 192-198

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抄録

レテルモビルは新規作用機序を有する抗ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)薬である.ウイルスに対する作用様式及び耐性ウイルスのゲノム配列の解析から,本薬の標的がウイルスのDNAターミナーゼ複合体であることが示された.既存のDNAポリメラーゼ阻害薬がウイルスDNAの複製を阻害するのとは異なり,本ターミナーゼ阻害薬はウイルスDNAの切断及びカプシドへの一単位長のゲノムのパッケージングを阻害する.細胞培養系でのHCMVの臨床分離株に対するレテルモビルの50%作用濃度はナノモル濃度であり,低濃度で抗HCMV作用を示す.レテルモビルはHCMVの実験室及び臨床分離株に対してin vitroで抗ウイルス作用を示す以外に,既存の抗HCMV薬に耐性のウイルス株に対しても活性を有する.レテルモビルはHCMVに対して選択性を示す一方で,他のヘルペスウイルス科を含む主要な病原ウイルスに対して活性を示さなかった.異種移植マウス感染モデルでのレテルモビルの50%及び90%有効用量は,それぞれ3及び8 mg/kg/日であった.同種造血幹細胞移植(HSCT)患者でのHCMV感染及びHCMV感染症は,全身状態の悪化や死亡率の増加につながる重篤な疾患である.第Ⅲ相国際共同試験では,同種HSCT患者でのレテルモビルの経口又は静脈内投与により,臨床的に意味のあるHCMV感染の予防効果が確認され,骨髄毒性及び腎毒性を示唆する傾向は認められず,忍容性も良好であった.

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