生体に投与した薬物の濃度は,さまざまな組織の内部で刻々と変化する.それに伴い,標的となる細胞集団の働きも不均一に変動していく.狭い範囲,すなわち〝局所〟におけるこれらの事象の推移を高時間分解能で測定することは,薬効や毒性の仕組みを理解する上で極めて重要である.しかし,従来の方法では,その実現は難しい.そこで本研究では,先端素材である「導電性ダイヤモンド」を用いて計測システムを創出した.この新技術は,薬物濃度を測定するための先端径が約40 μmの針状ダイヤモンド微小電極と,細胞の電気現象を捉えるガラス微小電極の組み合わせに基づく.本システムにより,麻酔下の動物へ静脈投与した利尿薬,抗てんかん薬,抗がん薬の薬物濃度の変化とその作用を,内耳や脳にてリアルタイム計測した.創出した画期的な生体内薬物センシングシステムは,多様な薬物や臓器に適用可能であり,次世代の創薬や治療法の展開に貢献すると期待される.