日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
便秘型過敏性腸症候群及び慢性便秘症に対する新規作用機序を有する治療薬 リナクロチド(リンゼス®錠0.25 mg)の薬理学的特徴並びに臨床試験成績
毛戸 祥博幸迫 正憲
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2019 年 153 巻 6 号 p. 289-298

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抄録

リナクロチド(リンゼス®錠0.25 mg)は,グアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体に高い選択性と結合親和性を有するGC-C受容体作動薬である.日本では,2016年12月に「便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)」を効能・効果として承認され,2018年8月に「慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)」への適応が追加された.非臨床薬理試験では,リナクロチドがGC-C受容体に結合することで細胞内cGMPが増加し,腸管腔では腸管分泌と腸管輸送能を促進させ,大腸粘膜下組織では正常時の大腸痛覚に影響を及ぼすことなく,大腸痛覚過敏時に細胞外cGMP増加により求心性神経を介した大腸痛覚伝達を抑制することが示唆された.臨床試験では,IBS-C患者でIBS症状の全般改善効果及び完全自然排便頻度の改善が,慢性便秘症患者で自然排便頻度の改善が認められ,それらの改善が長期にわたり維持された.また,IBS-C及び慢性便秘症患者のquality of life(QOL)と既存治療に対する満足度を下げる要因と考えられる腹部膨満感,及びIBS-QOLの継続的な改善がみられた.臨床試験中にリナクロチドの薬理作用に基づくと考えられる下痢を認めたが,症状に応じてリナクロチドを減量することで概ねコントロールが可能で,既存治療の課題である連用時の耐性はみられなかった.これらの非臨床薬理試験及び臨床試験の結果から,新規作用機序を有するリナクロチドは,その多様な薬理作用によって,IBS-C及び慢性便秘症患者の便秘や様々な腹部症状,QOLを改善し,安全性に大きな問題なく使用可能な薬剤であると考えられる.

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