2019 年 154 巻 4 号 p. 171-177
蛍光イメージング法は,組織・細胞内の特定の構成成分や機能分子を蛍光画像化する組織化学の基本的手法である.近年の顕微イメージング技術と蛍光プローブの目覚ましい進歩により,細胞内の蛍光機能分子が高い時間空間分解能で可視化できるようになり,生きた組織・細胞の機能解析が可能になった.ここでは,筆者が取り組んできた心筋組織の蛍光機能イメージングから得た以下の成果を紹介し,機能を見る組織化学の有用性を示す.①心臓のin situ Ca2+イメージング:ラットの摘出灌流心に高速共焦点顕微鏡を適用し,心筋細胞のCa2+動態を高い時間空間分解能で可視化した.心臓がCa2+過負荷に陥ると拡張期に筋小胞体からCa2+が自発性に放出されて個々の心筋でCa2+波が発生し,これが心臓内で同時多発すると不整脈原性の異常興奮が生じる.一方,筋小胞体からのCa2+放出が損なわれると収縮期に細胞内・細胞間でCa2+放出が空間的に不均一になり,一拍毎にCa2+濃度が交代性に増減するCa2+オルタナンスが生じる.この不均一なCa2+動態は小動物の心房や不全心で観察される横行小管(T管)の発現低下が一因とされ,心臓の収縮・拡張機能を反映する上で重要な現象と考えられる.②ギャップ結合機能異常による不整脈:心筋細胞間の電気的結合を担うCx43の機能をラット新生仔心筋の単層培養組織でドミナントネガティブ阻害すると,心筋組織の伝導速度が低下し,旋回性に興奮伝導する不整脈が起こりやすくなることを見出した.③心房細動の組織形態学的発生基盤:ラット摘出灌流心に心房細動を誘発し膜電位感受性蛍光プローブのイメージング下によりその発生起源を同定,組織学的解析との統合により心房に内在する不整脈原性基質を明らかにした.以上,生きた心臓組織の蛍光機能イメージングは,心臓の興奮伝導やその異常の解明に有用な情報をもたらしてくれる.