日本薬理学雑誌
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特集:シグナル受容器・一次繊毛を標的とした薬理学研究の展望
一次繊毛局在型GPCR―細胞センサーとしての分子基盤を探る―
斎藤 祐見子濱本 明恵小林 勇喜
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2019 年 154 巻 4 号 p. 179-185

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抄録

Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は膜7回貫通構造を特徴とする膜タンパク質であり,ヒトゲノム最大のファミリーを形成する.GPCRは閉鎖系(細胞-細胞間)ばかりでなく,開放系(光,匂い,味覚)の情報伝達を担い,様々な生理機能を制御する重要なシグナル分子である.現在使用されている薬剤の約30%がGPCRを標的としており,治験状況から見ても,GPCRは今後も引き続き,創薬標的となることが予想される.GPCRは細胞膜に局在する受容体として認知され,HEK293やCHO細胞の細胞膜に受容体を高発現させた実験系を用いることでGPCRの構造活性相関や活性調節因子の解析が行われている.ところが,2008年,あるGPCRは細胞膜ではなく,細胞膜から突き出た細胞小器官である神経細胞の一次繊毛膜に局在し,しかも脳領域選択的であることが報告された.繊毛には「細胞運動を制御する動く繊毛」と「不動型繊毛-一次繊毛」がある.後者は1つの細胞に1本しかないため,その微小な構造に「選ばれた」タンパク質が高度に集積する.このような機能分子集合体は,外部環境を鋭敏かつ迅速に感知するための基盤となっている.これまでの研究により,in vitro,in vivoのどちらの系においても,中枢神経の一次繊毛膜に選択的に局在することが確実なGPCRは限られていることも明らかになってきた.その数少ないGPCRのうちの1つが,摂食・情動・睡眠に関与する中枢性神経ペプチドであるメラニン凝集ホルモン(melanin-concentrating hormone:MCH)の受容体,MCHR1である.本稿では,まず繊毛局在型GPCRについて概説し,次に,MCHR1が一次繊毛膜という「場」を起点とすることで生じる動的現象(繊毛長の縮退)とその関連シグナル系に重点を置き,紹介する.

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