2020 年 155 巻 3 号 p. 179-184
超高齢社会を迎え,がんは身近な病気となったものの,医学の進歩に伴いがんサバイバーの数が急増しつつある.従来から抗がん薬や放射線治療による心毒性には細心の注意が払われてきたが,新たに登場した分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬等では多種多様な病態が報告されるようになり,がん治療関連心血管疾患(cancer treatment-related cardiovascular disease:CTRCD)としてその対策が急務となっている.腫瘍循環器学(cardio-oncology)は,がん患者の生命予後向上とQOL改善を共通の目標とする,学際領域の連携である.既に欧米では,まず臨床ニーズとして医療現場におけるCTRCDへの対応に関するチーム医療が,次に研究シーズとして国や学会レベルにおける対応を踏まえたトランスレーショナル・リサーチが発展しつつある.本稿では,腫瘍循環器学の現状と今後の課題について,国内外における最新の研究ポートフォリオ分析を含めて概説する.