2020 年 155 巻 3 号 p. 171-174
医薬品開発において心毒性評価は重要であり,さらに予測性の高い手法が望まれる.ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた催不整脈リスク評価法が開発され,国内外のコンソーシアムによる検証を経て,昨年秋よりICHでの議論が開始された.近年,がん治療の進歩により患者の生命予後が延長したこと,新たな作用機序を有する分子標的治療薬が登場をしたことなどにより,抗がん薬による心筋障害,冠動脈疾患,不整脈,高血圧症等の循環器系有害事象が注目を集め,cardio-oncologyと呼ばれる学際領域の重要性が増している.抗がん薬による心毒性に対しても,ヒトiPS細胞由来心筋細胞による評価が期待されている.そこで我々は,抗がん薬による左心室機能障害に着目し,インビトロ評価法の開発に取り組んだ.ヒトiPS細胞由来心筋細胞の動きを高解像度カメラで取得した画像の解析により,収縮・弛緩を評価できる新たなイメージング評価法を開発した.また,陽性対照となる抗がん薬による心毒性を評価できることを見出した.本総説では,抗がん薬による心毒性の評価の必要性や心筋障害(心筋収縮力低下)の評価法に関して最新の研究や国際動向,将来展望について紹介したい.