日本薬理学雑誌
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特集:ユニークな天然物資源を活かした,地域産業,国際化,医療に貢献する薬理学研究
高血糖および全脳虚血モデルマウスにおける河内晩柑果皮とオーラプテンの神経保護作用
奥山 聡澤本 篤志中島 光業古川 美子
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2020 年 155 巻 4 号 p. 214-219

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抄録

温州みかんは国内産主要果樹の中で第1位の収穫量であるが,愛媛県における柑橘類収穫品目は42(温州みかん1+中晩柑類41)と,柑橘類全体の収穫量と共に日本一の数を誇っている.その中でも,愛媛県特産柑橘の一つである河内晩柑(Citrus kawachiensis)の果皮には,クマリン化合物のオーラプテンが豊富に含まれている.オーラプテンは末梢組織において抗炎症効果を発揮することが示されていたが,これまで中枢神経系における作用は明らかでなかった.高血糖および脳虚血は,脳内において炎症や酸化ストレスを誘発し,脳に大きな損傷を引き起こすことが知られていることから,ストレプトゾトシン誘発高血糖モデルマウスと一過性全脳虚血モデルマウスに対してオーラプテンを与える検討を行った.高血糖モデルマウスの海馬におけるアストログリアの活性化とニューロンのタウタンパク質の過剰リン酸化は,オーラプテンの投与によって改善され,海馬歯状回でおこる神経新生の抑制も軽減した.また全脳虚血モデルマウスにおいても,オーラプテンは海馬においてミクログリアおよびアストログリアの活性化,さらに神経細胞死を抑制した.河内晩柑果皮乾燥粉末の抗炎症および神経細胞保護作用については,2型糖尿病モデルdb/dbマウスと一過性全脳虚血マウスを用いて調べた.河内晩柑果皮粉末投与はこれらのモデルマウスの海馬において,オーラプテンと同様の効果を示したことから,オーラプテンが河内晩柑果皮の神経保護作用にとって重要な役割を果たしていることが示唆された.

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