日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集:脳神経疾患の新規治療標的を探る
脳内免疫システムによる脳発達の制御機構と病態への応用
田辺 章悟村松 里衣子
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 156 巻 2 号 p. 81-84

詳細
抄録

近年の研究で,脳内に存在する免疫系細胞が脳の発達や障害に関与することが明らかになってきた.しかし,どの免疫系細胞がどのような機序で脳機能に関わるのかという詳細な分子メカニズムは解明されていない.我々は,脳の発達過程における免疫系細胞の役割と脳神経疾患の病態における免疫系細胞の機能解析に取り組んだ.脳の発達過程では,髄膜や脈絡叢にB細胞が豊富に存在しており,細胞培養実験や細胞除去実験によりオリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖を制御することで軸索のミエリン化に寄与していることを見出した.炎症性脳神経疾患である多発性硬化症のモデル動物を用いた解析では,脳内の免疫系細胞であるミクログリアがT細胞の増殖や分化を制御することで病態の進行を抑制していることを明らかにした.本稿では,脳の発達過程や脳神経疾患における脳内免疫システムの役割について最新の研究動向を自分たちの研究成果を交えて紹介する.

著者関連情報
© 2021 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top