日本薬理学雑誌
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特集:筋研究の新展開:疾患治療,創薬に向けて
ジャンクトフィリンによるL型カルシウムチャネル調節機構
中田 勉山田 充彦
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2022 年 157 巻 1 号 p. 4-8

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抄録

心筋や骨格筋には,細胞膜と筋小胞体が近接する結合膜構造が存在する.細胞膜上のL型カルシウムチャネル(LTCC)と筋小胞体膜上のリアノジン受容体は,この部位に集積し機能的複合体を形成している.これらのイオンチャネルの結合膜構造への集積は,正常な興奮収縮連関に必要不可欠であるが,その機構の詳細は不明である.結合膜構造を維持する分子として,ジャンクトフィリン(JP)が知られている.JPには4つのサブタイプが存在し,骨格筋にはJP1とJP2が,心筋にはJP2が発現している.本研究ではLTCCの局在や機能におけるJPの役割について検討を行った.骨格筋芽細胞由来の筋管に,JP1のC末端欠失変異体(JP1ΔCT)を導入すると,LTCCの結合膜への集積が阻害された.また,免疫沈降法,プルダウンアッセイを行い,LTCCのポアを形成するCaV1.1(別名:α1S)サブユニットのC末端とJPが物理的に結合していることを明らかにした.さらにアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を用いてJP1ΔCTをマウス筋に発現させると,LTCCの細胞内局在の異常,細胞内Ca2+上昇の抑制,筋収縮力の低下が認められた.次に,類似の方法で心筋におけるJPの役割を検討した.JP2のC末端欠失変異体をマウス心筋に強制発現すると,心重量の増加,左室内径短縮率の有意な低下が認められた.単離心筋細胞を用いた検討では,細胞内Ca2+上昇の抑制が認められた.また,免疫細胞染色によりLTCCについて検討を行ったところ,コントロールと比較して表面細胞膜により多く局在していた.以上より,横紋筋においてJP変異体はドミナントネガティブ様の作用を示し,LTCCの正常な細胞内局在を阻害することで,Ca2+代謝や筋収縮力の低下を誘導することが示された.このことから,横紋筋におけるJPとLTCCの物理的な結合が,正常な筋収縮に重要な役割を果たしていることが示唆された.

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